わたしの知らない子どもたち : 特集
映画館で泣いて、帰り道で思い出してまた泣けた。悲し
いからじゃない。こんな作品に出合えたことが嬉しいか
らだ【映画.com編集部員が"この仕事しててよかった"と
心から思うくらい刺さった】
長くこの仕事をしていると、
…そんなふうに思うほどの作品を"体感"することがある。
10月16日公開の「わたしの知らない子どもたち」は、まさに、一生の宝物になり得る感動をくれた映画だった。
【予告編】大人たちの想いが、子どもたちの明日を照らす―――
【心から良かった、どうかしてるほど良かった】この
衝撃を、感情を、とにかく世界中に向けて伝えたい――
まずは、本作に出合った映画.com編集部の言葉をお伝えしたい。
普段から映画を観ることを仕事にしている我々が、語彙を失うほどに"くらってしまった"。この映画は他の作品と"何か"が違う。
【観てほしい、観ればわかる】この激賞には理由が
ある。物語、音楽、キャスト、監督、全て"超一級"
では、この映画の"何が"そんなにすごいのか? ひと言では語れないその魅力を、5つにわけて解き明かしていく。
●【"物語"――裕福だった女の子が、男の子になりすまし生きる】
暗い物語ではない。「グーニーズ」「スタンド・バイ・ミー」を観ているときのような勇気と高揚感すらある。
本作のあらすじはこうだ。
裕福な家庭に生まれ、音楽を愛しのびのびと育った少女。戦争によって家も家族も失い、
これだけ読んだとき、「戦災孤児が主人公ということは重い映画だろう」と予想する人はきっと少なくない。だけど、
どんな状況でも、前向きに、力強く、生きようとする姿に。どんな世界を知っても、決して濁らない凛とした眼差しに。
子どもたちがみんなで寄り添い、時に仲間割れを起こしながらも、兄弟のように成長していく姿を見つめる感覚は、まるで「グーニーズ」や「スタンド・バイ・ミー」を観ているときに近い。ある施設から脱走するシーンさえも、
エンドロールで訪れる感情は悲しみじゃない。
生きる勇気、生き抜く覚悟、そして生きる喜びを、私はこの物語から教わった。
●【"映像と音楽"――目と耳で感じる、すさまじい没入体験】
焼け野原の東京、高架下のリアル、感情を揺さぶる劇伴…「ゴジラ-1.0」白組×「国宝」音楽・原摩利彦×坂本龍一がのこした楽団による強烈タッグ
本作を観てまず驚いたのが、大スクリーンで観るべき圧倒的な"映画力"。
瓦礫にまみれた街を子どもたちが歩く景色、高架下で靴磨きや体を売って生きる人々、その中で時折起こる、人と人のやさしい触れ合い…戦後・東京の日常が、
第96回アカデミー賞において、「ゴジラ-1.0」で日本映画およびアジア映画初となる視覚効果賞を取得した映像制作会社・白組が本作でもそのクオリティを発揮。さらにそこへ、「国宝」の音楽を手掛けた原摩利彦と、東日本大震災をきっかけに坂本龍一が立ち上げた、小学生以上の子どもたちが中心となって構成される東北ユースオーケストラがエモーショナルな曲を乗せる。
つまり本作は、
"本物"で、"切実"で、感動的な映像世界に、映画館の親密な暗闇で没入してみてほしい。
●【"主演"――日本映画史上最高と断言したい子役】
撮影当時12歳、小八重葵美というニュースター。その"瞳"が魂を射抜く。彼女を観るだけで、鑑賞料金の何倍も価値がある。
「ガラスの仮面」で月影千草が主人公・北島マヤの底しれぬ才能に驚がくしたように、本作を観る観客もきっと驚くはず。
撮影当時12歳にして、今年の日本アカデミー賞主演女優賞候補となることは確実では?と思えるレベルの
音楽が好きで、家族とともに幸せに暮らしていた主人公の琴子。戦後の混乱の不条理に翻弄されながらも、生き抜こうとする
百聞は一見にしかず――私たちはとんでもない才能…その開花の瞬間に、出くわしてしまったのかもしれない。
●【"共演"――豪華キャスト、息も忘れる演技の応酬】
二階堂ふみ、役所広司、田中裕子、岡田准一、竹野内豊、吉田羊、坂東龍汰…一瞬一瞬が本作のハイライト
二階堂ふみが、自身も戦争で夫と職を失い、乳飲み子を抱え路頭に迷うも、行方が分からなくなった琴子を探す担任・曽根を。
岡田准一が、闇市で暮らす子どもたちを受け入れる暴力団組長・菊沢を。
坂東龍汰が、子どもたちを取材する新聞記者・諸積を。
竹野内豊が、娘・琴子を愛し、戦火の中で仕方なく疎開させる父・茅野孝一を。
吉田羊が、散り散りになった子どもたちを迎え入れる孤児院「隣相館」の館長・鷹間を。
さらに後半に登場する、役所広司と田中裕子。東京湾の孤島にある矯正施設から逃げ出した琴子たちを、煙たがりながらも受け入れ、生きる術を教える海苔漁師の老夫婦・山井甚平とけいを演じる。スクリーンに映し出された瞬間、
それぞれが、それぞれの立場で懸命に生きているなかで、子どもたちに"してあげられなかったこと"を悔いながら、それでも子どもたちを見放すまいと奔走する姿に、心から、目から滝のような涙が溢れ出る。
演技は掛け算。そんなことが染み入る、
●【"観たあと"――物語を思い出し、何度も涙が溢れ出す】
その決断、その結末。理不尽な世界でも、私たちは希望を見つけられる。
本作が描くのは"戦争"そのものではなく、「ごく普通の、温かい家庭で愛され文化的な生活を送っていたはずの子どもが、ある日突然、すべてを奪われていく理不尽」だ。
そしてそれは過去の歴史ではなく、
本作を観たあとに、いろんな人々と感想を話した。その度に、数々のシーンを思い出し、
その物語、その決断、その結末。与えてくれる"温度"は、鑑賞から時間が経っても、繰り返しあなたを温めてくれるだろう。
きっと、あなたは大切な感情に出合う。
【最後に】私にも語らせてほしい――
映画.com編集長が、本作への思いの丈を綴る
編集部のみならず、映画.com編集長・大塚史貴も、本作「わたしの知らない子どもたち」に
西川美和の"誠心誠意"が、全編に行き届いている。
戦争で親を亡くし、否応なしに路上へ放り出された子どもたちが、どれほど悲惨な生活を余儀なくされたか。子どもたちの射すくめるような淀みのない眼差しを、我々は記憶に留め置かねばならない。世界中の子どもたちに、あんな絶望を味わわせてはならない。
子どもたちに生きる糧を与える新興ヤクザの組長・菊沢(岡田准一)が、主人公・琴子(小八重葵美)に語りかける。
西川美和の"誠実"が、観る者にささやきかける。
この作品に登場する人物ひとりひとりが、「わたし」でも「あなた」でもないと誰が断言できようか。
子どもたちの、そして大人たちの眼差しを、筆者は眼を見開かずとも忘れることができなくなった。